Takeshi Ikemoto

医療 × 経営 × テクノロジー

·夜便 2本目·

DeNA、Devinを全社導入し開発体制を見直し

DeNADevin開発効率化AIソフトウェアエンジニア

一言で言うと

DeNAがAIソフトウェアエンジニアDevinを全社2000人超に導入し、古いシステムの見直しや開発プロセスの効率化において、最大で作業効率が6倍になるなど、大きな生産性向上を実現しました。

何が起きているのか

DeNAは2026年3月4日、Cognition AIが開発したAIソフトウェアエンジニアDevinの企業向け版であるDevin Enterpriseを、全社2000人以上の従業員に導入したと発表しました。ゲーム、ヘルスケア、スポーツ、スマートシティなど幅広い事業を持つ同社は、AI活用を進める中で、セキュリティと運用体制を重視しながら段階的に導入を進めてきました。

導入は3段階で行われ、現在は40以上のチームでDevinの活用が始まっています。具体的な成果として、以下のような事例が報告されています。

* 古いシステムの刷新: 社内基幹システムで使っていた古いプログラムを、新しい言語へ書き換える作業において、従来1カ月かかっていた作業が1週間で完了し、作業効率が約4倍に向上しました。 * スマートフォンアプリ開発: iPhone向けのiOSと、Androidスマートフォン向けのAndroidのコードを自動生成し、共通部分もまとめて作ることで、開発速度が2倍に向上しました。 * 海外委託開発の品質管理: 海外パートナーから納品されたコードの確認やテストをAIが自動実行し、従来1〜2時間かかっていた作業が数分で完了するようになりました。これにより、セキュリティ上の問題も早く見つけやすくなっています。 * 社内システム管理: ソースコードの内容を要約し、重要な変更点を抽出する機能により、情報確認時間が10分の1に短縮され、年間約2000時間のコミュニケーションコスト削減が見込まれています。 * データ分析: ゲームとユーザーの行動データ分析では、データベースへの問い合わせ文であるSQLクエリをAIが自動生成することで、分析速度が3倍に向上しました。 * 企画書作成: 企画書作成時にAIがソースコードを読み込み、仕様確認や追加開発の工数見積もりを支援することで、エンジニアへの確認工数が8分の1に削減されました。

導入にあたってDeNAは、Devin EnterpriseVPC(Virtual Private Cloud)という、社内専用に近い閉じたネットワーク環境で運用しています。さらに、SSO(Single Sign-On)という「一度のログインで複数の社内サービスを使える仕組み」と連携させ、誰がどこまで使えるかというアクセス管理も厳しくすることで、セキュリティを確保しています。

あわせて同社は、全社でAI活用を広げるためにDeNA AI Linkという社内グループを立ち上げました。このグループは、AI導入の相談、コードレビューの支援、実践的なセミナーの提供などを担い、従業員がAIを安全かつ効果的に使えるようにする役割を果たしています。

AI業界の文脈では

DeNAによるDevinの全社導入は、AIソフトウェアエンジニアが単なるコード生成ツールではなく、開発の流れ全体を支える「エージェント型AI」として使われ始めていることを示しています。ここでいうエージェント型AIとは、指示された一部だけを処理するのではなく、ある程度まとまった仕事を自律的に進めるAIのことです。

特に、多くの企業が抱える古いシステムの刷新という課題に対して、AIエージェントが具体的な助けになることが見えてきました。手作業では時間もコストもかかる書き換え作業や品質確認をAIが担うことで、企業は古い仕組みの重荷を減らし、新しいサービスや機能開発に力を回しやすくなります。

また、この事例は、AI導入の成否が「ツールを入れたかどうか」だけでは決まらないことも示しています。安全に使う仕組み、運用ルール、従業員への教育や支援まで含めて整えて初めて、全社導入が機能します。開発者の役割も、コードをすべて自分で書くことから、AIに指示し、その結果を確認して使いこなす方向へ少しずつ移っていくでしょう。

私の見立て

Devinの全社導入は、AIが単なる補助ツールではなく、企業の基幹業務そのものを見直す材料になり得ることを示しています。

経営者としては、古いシステムが残っていること自体が、新しい挑戦の足かせになりやすいです。DevinのようなAIエージェントは、その負担を減らし、市場の変化に対応しやすい体制を作る助けになります。単なるコスト削減策としてではなく、事業成長を支える基盤としてAIを位置づける視点が重要です。

AIビルダーとしては、AIがコード生成だけでなく、テスト、デバッグ、文書作成、要件整理の支援まで担うことで、開発全体を効率化できる点が重要です。開発者は細かな作業に追われにくくなり、より重要な判断や設計に時間を使いやすくなります。

医療機関でも、電子カルテや基幹業務システムの見直しは大きな課題です。DevinのようなAIエージェントは、こうした複雑なシステムの移行や保守にかかる時間と負担を減らす可能性があります。結果として、医療現場のデジタル化を進めやすくなることも期待できます。

→ 何が変わるか: ソフトウェア開発は、「人がすべてを書く」形から、「人がAIに役割を与え、結果を確認しながら進める」形へ少しずつ移っていくでしょう。

→ 何をすべきか: 自社のレガシーシステムや開発プロセスにおけるAIエージェントの適用可能性を具体的に検討し、セキュリティとガバナンスを確保した上で、段階的な導入計画を策定すべきです。