Takeshi Ikemoto

医療 × 経営 × テクノロジー

·朝便 2本目·

AI学習データ利用巡り、ニュース社がアーカイブをブロック

WaybackMachineInternetArchive著作権AI学習データ

一言で言うと

23の主要ニュースメディアが、AI企業に学習データとして使われることを警戒し、Wayback Machineによる自社記事の保存を止め始めています。今回の本質は、AIと著作権をめぐる対立が、過去の記事をあとから確認できる公共的な記録にも影響し始めたことです。

何が起きているのか

23の主要ニュースメディアが、Internet Archive(インターネット上の情報を保存する非営利団体)が運営するWayback Machine(ウェブサイトの過去のバージョンを閲覧できるアーカイブサービス)による自社ウェブページのアーカイブをブロックしていることが報じられました。

具体的には、USA TodayThe New York Timesを含むこれらのメディアは、AI企業が「フェアユース(公正利用)」の原則を悪用し、アーカイブされた記事を大規模言語モデル(LLM: Large Language Model)の学習に利用することを懸念しています。

Wayback Machineは、ウェブサイトの過去のバージョンを保存することで、歴史的な情報へのアクセスを提供し、誤情報の検証にも役立つ公共性の高いサービスです。Internet Archiveの活動は、裁判所によって合法であり、コンテンツの発見、研究、新たな洞察を可能にする「変革的な目的」を持つフェアユースの一部と認められています。

しかし、メディア側のブロックにより、誤情報が蔓延する現代において、社会が歴史的なニュース記事や重要な情報にアクセスする機会が減少するリスクが生じています。

AI業界の文脈では

AI業界では、大規模言語モデル(LLM)の性能向上のため、ニュース記事や書籍、ウェブコンテンツなど、インターネット上の膨大なテキストデータが学習データとして利用されてきました。しかし、コンテンツ制作者側からは、無許可でのデータ利用が著作権侵害にあたるという主張が強まっています。

特に、The New York TimesOpenAIMicrosoftを著作権侵害で提訴した事例など、大手メディアとAI企業の間で法的な争いが顕在化しています。

今回のWayback Machineのブロックは、AI企業によるデータ利用への対抗策として、コンテンツ提供者が直接的なアクセス制限に踏み切った事例であり、法廷闘争だけでなく、技術的な手段によるデータ保護の動きが広がっていることを示唆しています。

これは、AIモデルの学習データ確保が今後さらに困難になる可能性を示しており、質の高いデータを合法的に取得するための新たなビジネスモデルや契約形態が求められるでしょう。

私の見立て

今回の問題は、AI学習データを守りたいメディアの論理と、過去の記事を残したい公共アーカイブの論理が正面からぶつかったことです。

メディア側が警戒するのは、自社コンテンツがAI学習に使われることで価値が薄まることです。一方で、Wayback Machineのようなアーカイブは、過去の報道を確認したり、誤情報を検証したりするうえで欠かせません。

そのため今回のブロックは、自衛策としては理解できても、社会全体では情報を振り返る力を弱める可能性があります。大事なのは、ブロックか無制限利用かの二択ではなく、どういう条件なら使えるのかを整理することです。

→ 何が変わるか: AI企業は質の高いニュースデータを使いにくくなり、同時に社会側も過去記事をたどりにくくなる可能性があります。

→ 何をすべきか: AI企業とコンテンツホルダーは、データ利用条件や対価のルールを明文化し、アーカイブの公共性を損なわない形を探るべきです。