一言で言うと
今回示されているのは `利用全体` ではなく `ウェブトラフィックのシェア` です。つまり、各サービスの公式サイトやWeb版にどれだけ人が流入しているかを比べた数字です。そのうえで見ると、ChatGPTのウェブ上のシェアが低下し、代わりにGoogle GeminiとClaudeが伸びています。生成AIの入口が一強から複数化しつつある、という変化が見えます。
何が起きているのか
ウェブトラフィック分析サービスSimilarwebのデータによると、OpenAIのChatGPTは、過去1年間でウェブトラフィックシェアを77.43%から56.72%へと大きく減らしました。一方で、Google Geminiは6%から25.46%へと急増し、AnthropicのClaudeも2.2%から6.02%へと約3倍に成長しています。
ここでいうシェアは、各AIサービスのサイトやWeb画面にどれだけ人が来ているか、という比率です。あくまでWeb経由の動きを見た数字であり、アプリ、API、他サービスへの組み込み利用まですべて含んだものではありません。
Google Geminiの成長は、GoogleがAndroidデバイスでの積極的なプッシュ、特に検索クエリをGemini Searchチャットに誘導する通知が要因と見られています。Claudeは、Deepseek(3.74%)やGrok(3.44%)を追い抜き、市場での存在感を高めています。Microsoft CopilotはMicrosoft 365 Chatのトラフィックを含め1.99%となり、Perplexityは1.64%です。
OpenAIのサム・アルトマンCEOは、2月にChatGPTのユーザー数がテキサス州だけでClaudeの全米ユーザー数に匹敵すると述べていましたが、今回のデータは少なくとも `ウェブ上の入口` では市場が多様化していることを示唆しています。
AI業界の文脈では
これまでChatGPTは、対話型AIの代名詞として市場を独占してきましたが、今回のデータは、その優位性が少なくともウェブ上では揺らぎ始めていることを示しています。GoogleやAnthropicといった競合が、それぞれの強みを活かして追い上げている結果です。
特に、GoogleがAndroidという巨大なモバイル基盤を通じてGeminiを普及させている動きは、AIを既存サービスに深く組み込んでユーザーを取りにいく方向性を示しています。一方で、Claudeのような新興勢力が企業向けや長文処理で評価を高めていることも重要です。大規模言語モデルは一つの勝者に収れんするのではなく、用途ごとに選ばれる段階に入りつつあります。
私の見立て
大規模言語モデル市場は、初期のChatGPT一強時代から、複数の有力なプレイヤーがしのぎを削る多極化時代へと移行しています。ただし今回の数字は利用全体ではなく、`ウェブでどこに入り口があるか` を見たものです。そう考えると、利用者が複数の導線を使い分け始めている変化を示すデータとして読むのが自然です。
各モデルが異なる強みを持つため、企業は自社の具体的なニーズに合わせて最適なAIモデルを選定できるようになります。例えば、既存のGoogleエコシステムとの連携を重視するならGemini、長文処理や安全性に重点を置くならClaude、汎用的な対話能力を求めるならChatGPTといった具合です。
重要なのは、単一のAIモデルに固執せず、複数のモデルの特性を理解し、用途に応じて使い分ける「マルチモデル戦略」の重要性が高まることです。これにより、特定のモデルの機能制限やコスト変動リスクを分散し、より柔軟なAI活用が可能になります。
→ 何が変わるか: 大規模言語モデルの選択肢が多様化し、企業は自社のニーズに合わせた最適なAIモデルを選びやすくなります。
→ 何をすべきか: 企業は、特定のAIモデルに依存せず、複数のモデルの特性を比較検討し、用途に応じたマルチモデル戦略の導入を検討すべきです。