一言で言うと
企業向け顧客管理ソフト大手のSalesforceで、Marc Benioff最高経営責任者(CEO)が、AIエージェント時代にはAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース: Application Programming Interface)が新しい顧客接点になると述べました。人が画面を触る前提から、AIが裏側の窓口を直接使う前提へ、企業システムの設計が変わり始めているという話です。
何が起きているのか
SalesforceのMarc Benioff CEOは、AIエージェントが普及する時代には、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース: Application Programming Interface)が新しいユーザーインターフェース(UI: User Interface)になると述べています。AIエージェントとは、人の指示を受けて複数のサービスをまたぎながら仕事を進めるAIです。
いままでは、人がブラウザで画面を開き、ボタンを押してサービスを使うのが普通でした。これからは、AIエージェントが裏側でAPIを使い、Salesforceのデータや接続された外部データソース、ワークフロー、タスクに直接アクセスする流れが増える、という考え方です。
Salesforceは「Headless 360」という戦略を掲げ、AgentforceやSlackを含む自社のプラットフォーム全体をAPI経由で開放しています。つまり、人が画面を開いて使う前提だけでなく、AIエージェントが裏側から直接サービスを呼び出して使う前提で、仕組みを作り直そうとしているわけです。
Benioff氏は、AIエージェントがSlackや音声などのチャネルを通じてデータ、ワークフロー、タスクに直接アクセスできるようになれば、人間が毎回ブラウザを開いて操作する場面は減っていくと説明しています。要するに、APIの重要性が高まるのは、AIが画面を見るのではなく、裏側の窓口を直接呼び出して仕事をするようになるからです。
OpenAIのSam Altman CEOも2026年2月に「すべての企業は、望むと望まざるとにかかわらず、API企業になる」と述べており、従来のUIがAIエージェントによるサービスアクセスで価値を失うという同様の主張をしています。
AI業界の文脈では
これまでのソフトウェア開発では、人間が直感的に操作できる画面が重視されてきました。しかし、AIエージェント(AI Agent)が複数のサービスをまたいで仕事を進めるようになると、機械が直接サービスを使うためのAPIの重要性が一気に高まります。
これは、AIが単なる相談相手ではなく、実際に仕事を進める「働き手」として企業の業務に深く入り込む流れを示しています。Salesforceのような企業向けソフトの大手がこの方向を打ち出すことで、企業内の業務フローがAIエージェント前提に作り替えられていく可能性があります。
私の見立て
AIエージェントが企業の業務に深く入り込むにつれて、人間が直接触る画面よりも、AIが仕事を進めるために使う窓口であるAPIの質が、サービスの価値を左右するようになります。
これは、企業が提供するサービスの設計思想そのものを変える話です。これまでは人間が使いやすい画面を作ることが中心でしたが、今後はAIエージェントが効率よく安全に使えるAPIをどう整えるかが競争力になります。
言い換えると、これからの企業は `人に使われる会社` であるだけでなく、`AIに使われる会社` になる必要があります。これは単なる技術変更ではなく、顧客との接点やビジネスの設計そのものに影響する変化です。
では、AIに選ばれやすいAPIとは何か。少なくとも次の3つが重要になります。
1. 何をするAPIかが明確であること 機能名や説明を見れば、顧客情報の取得なのか、更新なのか、送信なのかがすぐ分かることです。
2. 入力と出力が構造化されていること 必要な項目、返ってくるデータ、失敗したときの理由がはっきりしていれば、AIは迷いにくくなります。
3. 安全に使える境界が引かれていること 読み取りだけできるAPIと、更新や送信までできるAPIが分かれているほうが、誤操作や暴走を防ぎやすくなります。
便利さだけを見ると、何でもできるAPIを開きたくなりますが、AIエージェントが直接サービスを触る世界では、権限管理、監査ログ、承認フローがこれまで以上に重要になります。特に、送信や更新のような重要操作では、人の確認をどこに残すかまで設計しないと、エージェントの暴走や想定外の処理がそのまま業務事故につながりかねません。
→ 何が変わるか: 企業は、人間向けの画面だけでなく、AIエージェントが使いやすいAPIを事業の中核として考える必要が出てきます。
→ 何をすべきか: 自社のサービスやデータを、AIエージェントが安全に呼び出して使える形で整備しつつ、権限管理や承認フローを含めて、どこまで外部のAIに開くかを戦略として考えるべきです。